恐怖の館「ローレル」
恐怖の館「ローレル」

 

 

 

それは新宿の三丁目というところにございました。
えぇ・・・・東京の新宿です。
場所でございますか?場所は・・・・そうですね・・・・
昔三越があったあったあたり,そう,今では「ビックロ」というのでしょうか,
アレがあるすぐそばでございました。

そこに「ローレル」という「昭和」を絵に描いたような,よく言えば情緒漂う喫茶店・・・
えぇ,実際はその建物の外見にも,雰囲気にも「情緒」の「じょ」の字もございませんから,ただの古い喫茶店と申し上げた方のが正確なのでございましょうか。

その「ローレル」という喫茶店に先日行ったのです。

 

そこは今ではめずらしい館でございました。
年かさ75くらいでございましょうか,あるいは80はゆうに超えていらっしゃるのかもしれません。
お歳を重ねた男性―おそらくオーナーなのでございましょう。
それはそれは厳しく従業員たちにあたっておりました。
客を案内しては,その案内場所について叱責し,あれが見当たらないといえば従業員を厳しく問い詰め,すぐに答えられないと「もういい!」と怒鳴り散らし,コレをやれ,アレはどうした,これはなんでこうなんだ,と息つく暇もないほどに従業員を叱責しているのでございます。

私は最初から怯えながら,それでもなんとか勇気を振り絞って
ケーキとアイスコーヒーのセットをお願いしたのですが,注文を持ち帰った従業員に,あのおじい様が今どきアイスコーヒーなのかホットの間違いではないのか厳しく問い詰める声が聞こえるのでございます。

その喫茶店は地下1回,地上3階のお店だったのでございますが,そのおじい様は上に下にと階段を駆け巡り,それぞれの階の従業員を叱責しているやうでございました。
生きた心地がしない,とはこのことでございましょう。
私は,いえ,正確には私とその友人は,肩をすくめながらその場にいたのでございます。

これだけ厳しい職場に,それでもなおいるというのは,今の時代でございます。
おそらくよほど鈍感なのか,なにかの弱みを握られているに違いないのでございます。
おそらく後者でございますことを鑑みて,私どもは戦慄せざるを得なかったのでございます。

なんという恐ろしいことでございましょう。
このご時世,今年で平成も終わるというこのご時世に半奴隷として働かされている青年たちがいるのでございます。

それもこの東京を代表する大都会にでございます。
いいへ,大都会だからこそなのかもしれません。
大都会を隠れ蓑にして,青年たちは奴隷のやうに働かされているのでございます。

出されたケーキはいわゆる「業務用」として専門業者から下ろされているケーキ。
コーヒもおそらく,いえ十中八九の自信を持って「キーコーヒーの業務用パック」と断言できる代物でございました。

 

そのようなこだわりのない喫茶店であるにもかかわらず,いえ,こだわりがないからなのでしょう。
客人が大勢いる前で怒鳴り散らしているのでございました。

 

よろしかったらみなさま,ぜひ足をお運びください。
そこには昔懐かしい昭和漂う主従関係を垣間見ることができる空間でございます。

怒鳴り散らされている従業員たちにハラハラしながら,
緊張感のある空間で業務用コーヒーと業務用ケーキをお召し上がりくださいませ。

 

恐怖の館「ローレル」

 

 

なんのこだわりもない、ただ高いだけの業務用ケーキ。

 

 

 

 

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